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6か月ルールより5年ルールが優先 ― 税務調査に関する最高裁判所判決

更新日:9月4日

インドネシアでは、税務調査が開始して、1年以上経過しているのに、税務署から音沙汰がない、ということがよくあります。税務調査は、原則として一定の期間内に完了させることが税務署に義務付けられています。そのため、1年以上音沙汰がない税務調査は、「期限切れ」だから安心、と思うなかれ、昨年に驚くべき判決が出ています。

インドネシア最高裁判所(MA)は、税務調査が法律上の期間を超えて実施されたとしても、「追徴課税通知(SKP)さえ5年以内に発行されていれば有効」との判断を下しました。この判決により、従来「調査期間の超過は違法では?」と考えていた納税者にとっては、不利な判例が形成されたといえます。


背景と争点

争点:税務調査には一定の期限(通常6か月+最大2か月延長)がありますが、

👉 この期間を超えて実施された税務調査に基づく「追徴通知(SKP)」は無効なのか?

という点が争われました。


納税者側の主張

  • 税務調査は、財務大臣規則 No.17/PMK.03/2013(通称 PMK-17)により、通常6か月以内に終える必要があり、それを超える調査は手続き違反であり無効である。


最高裁の判断(判決要旨)

  • たとえ税務調査が期限(6か月+2か月)を超えて行われていたとしても、👉 SKP(税務更正通知)がインドネシア税法(KUP法)第13条(1)に定める「5年以内」に発行されていれば問題ない

  • よって、「SKPは有効」と判断され、納税者側の主張は退けられました。


判決の詳細

  • 判決番号:No. 1633/B/PK/Pjk/2024

  • 判決日:2024年5月6日


実務への影響と今後の注意点

インドネシアでは「判例法」は明示的に採用されていませんが、今回のような最高裁判決は実務に大きな影響を与えるため、他の企業の税務対応にも波及すると考えられます。

今後は、

🔹 税務調査期間の経過=安心ではない

🔹 SP2後にしばらく税務署の動きがなくても、5年以内であればSKPが出るリスクが残る

ということになります。


なお、2025年の新規則(PMK-15/2025)では、調査の完了期限をより厳格に定めています(通常5か月、移転価格調査では+4か月延長可)。この新規則は、本件の最高裁判決をうけて、混乱を避けるために明確化したものと考えられます。したがって、新規則施行後に始まった税務調査については、こうした混乱は避けられるものと思います。

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