3か月超の遅延インボイスでも容認:PPN控除を認めた判決
- F&A Writer
- 7月21日
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更新日:9月4日
1. 事案の概要
今回は、2013年度にPT TIIとインドネシア税務総局(DJP)の間で争われた、付加価値税(PPN)に関する税務裁判所の判決のうち、国外との無形取引にかかるPPNについて極めて示唆に富む内容をご紹介します。
本件では、国外への無形サービスの支払いに関連してPPNの納税義務が発生する取引において、納税が遅れた場合でも、そのPPNを仕入税額控除(input tax credit)として認めることができるか否かが争点となりました。
納税者側は、納税の遅延があったこと自体は認めたものの、それを理由に仕入税額控除を否認した税務当局の判断に異議を唱え、税務裁判所に提訴しました。
その結果、裁判所は「納税が遅延していたとしても、一定の条件を満たしていれば仕入税額控除として認められる」との判断を下し、納税者側の主張を支持しました。
本件の主な争点は次のとおりです。
納税者(控訴人)が発行した税務インボイス(Faktur Pajak) 総額 26,855,228 ルピア分が、本来作成すべき日から 3 か月を超えて発行されたため、Faktur Pajak としては無効とされた点。
前項の理由で 控訴人は Faktur Pajak を発行していないものとみなされた点。
当該 Faktur Pajakに記載された PPN(海外無形資産またはサービス利用に係る納付書〈SSP〉。Faktur Pajak と同等に扱われる)は、仕入税額控除(Pajak Masukan)として控除できないとされた点。
これら 3 つの争点について、税務裁判所は納税者側の主張を全面的に認めました。
2. 判決データ
判決番号 : PUT-104999.16/2013/PP/M.XVB(2018 年)
控訴人 : PT TII
被控訴人 : インドネシア税務総局(DJP)
異議決定 : DJP が 2016-04-14 付で発行した異議却下決定(KEP-00473/KEB/WPJ.07/2016)を不服として控訴。
3. 争点発生の背景
被控訴人が行った更正は、控訴人が発行した Faktur Pajak が発行期限(インボイス発行日から 3 か月以内)を超過していたとして、額面 26,855,228 ルピアを無効としたもの。
該当インボイスは 2012 年 10 月に発行(海外サービス利用時)したが、当該 PPN の納付書(SSP)は 2013-07-10(課税期間 2013 年 6 月)に作成され、3 か月超の遅延。
4. 裁判所の判断理由
インボイス日付が負債計上より先行しているため、PPN の発生時点はインボイス日(PP 1/2012 第 17 条等)と判断。よって Faktur/SSP はインボイス発行時点で作成・納付すべきだった。
PPN は 2013-07-10 に納付されており、遅延に対して STP(2 %/月の加算税)が課されている。
したがって、遅延納付であっても仕入税額控除として認められる(SE-147/PJ/2010 第 11 項)。
以上を総合し、被控訴人による仕入税額控除否認は維持できないと結論付けた。
5. 判決主文
被控訴人の異議決定 KEP-00473/KEB/WPJ.07/2016(2016-04-14)を取り消し、
2015-01-27 付 PPN 不足納付更正(SKPKB 00003/207/13/059/15、課税期間 2013-06)に対する控訴を全面的に認容。
6. 結論・実務上の示唆
遅延納付された PPN(海外役務利用)であっても、仕入税額控除が可能。
本件は、納税者が遅延理由を立証し、インボイスと納付時期のズレを是正することで、課税当局の否認を覆した好例。
インドネシアで事業を行う日系企業にとって、海外サービス利用時の PPN 納付・記帳タイミング管理が重要であることを示している。
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