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PPh第26条コミットメントフィー課税は無効? ― 租税裁判所が税務当局の更正を全面取消した事例

  • 3月4日
  • 読了時間: 5分

租税裁判所は、PT Bank Sumitomo Mitsui Indonesiaに対して税務当局が行ったコミットメントフィーに関するPPh第26条課税の更正(Rp139,387,729)を全面的に取り消しました。

本件では、コミットメントフィー Rp696,938,644 に対し、税務当局は所得税法第26条に基づく20%の税率を適用しました。しかし裁判所は、租税条約(P3B)の適用が国内法より優先されると判断しました。

その結果、税務当局が課した以下の課税はすべて無効とされました。

  • 追加税額:Rp139,387,729

  • 行政制裁:Rp60,884,561

合計課税額:Rp200,272,290

最終的に、本件における未納税額は0ルピアと判断されました。


背景

本件は、PT Bank Sumitomo Mitsui Indonesiaにおけるコミットメントフィーに対するPPh第26条の課税標準(DPP)を巡る税務紛争です。

インドネシアの法制度は、拘束的先例主義を明示的に採用しているわけではありません。しかし、本件で争われた コミットメントフィー Rp696,938,644 に対するPPh第26条課税標準の問題は、インドネシアで事業を行う多くの日系企業が直面する可能性のある論点であり、実務上の参考事例となります。


本件の主な争点

本件では、主に次の点が争点となりました。

  • 税務当局は、DGTフォームに対象金額が記載されていないことを理由に、租税条約適用の行政要件を満たしていないとして更正を維持しました。

  • 控訴人は、租税条約(P3B)税率を適用するための要件はすべて満たしていると主張しました。

  • また控訴人は、コミットメントフィーに対する課税権は インドネシア・シンガポール租税条約第7条(事業所得)に基づいて判断されるべきであり、所得税法第26条は適用されないと主張しました。


税務当局の主張

税務当局は、2017年に計上されたコミットメントフィーについて、控訴人がPPh第26条の源泉徴収、納付および申告を証明できないと指摘しました。

また、帳簿に計上されている Rp4,220,925,552 のコミットメントフィーについても、PPh第26条の申告および源泉徴収が確認できないとしました。

さらに税務当局は、次の点を問題視しました。

  • 当該金額が PPh第23/26条の月次申告書に記載されていない

  • DGTフォーム(SKD WPLN)にも記載されていない

これらの理由から、租税条約税率は適用できないと判断しました。

その結果、税務当局は租税条約税率を適用せず、所得税法に基づく20%税率を適用して次の更正を行いました。

  • 更正対象額:Rp696,938,644

  • 追加税額:Rp139,387,729

  • 行政制裁:Rp60,884,561

合計課税額:Rp200,272,290


控訴人(納税者)の主張

控訴人は、コミットメントフィー Rp696,938,644 に関する更正に同意しませんでした。

控訴人は、SKD(DGTフォーム)と帳簿の金額差について、契約に基づき会計基準に従って発生主義で費用認識を行った結果であると説明しました。

また当時は、

  • 外国納税者(WPLN)から請求書を受領していなかった

  • 実際の支払いも行っていなかった

ため、2017年度の PPh第26条申告書には当該金額を記載していなかったと主張しました。

一方、実際に請求された所得については、PPh第26条の源泉徴収、納付および申告を適切に実施していると説明しました。

さらに控訴人は、コミットメントフィーの性質について次のように説明しました。

コミットメントフィーは、スタンバイ信用状(SBLC)に対する対価です。SBLCは、インドネシアの銀行規制であるBMPK(与信限度規制)を遵守するため、保証人が信用リスクを引き受ける仕組みとして利用されています。

また控訴人は、

  • インドネシア・シンガポール租税条約

  • インドネシア・日本租税条約

において、コミットメントフィーは第7条の事業所得に該当すると主張しました。

租税条約の原則では、

  • 課税権は 受益者の居住国に帰属します

  • ただし インドネシアに恒久的施設(BUT)が存在しないことが条件となります

したがって、本件では租税条約が国内法より優先される(lex specialis)ため、所得税法第26条は適用されないと主張しました。


裁判所の判断

租税裁判所は、税務当局の更正は維持できないと判断しました。

裁判所は、仮に SKDに行政上の不備があったとしても

  • 受益者が租税条約締結国の居住者であること

  • インドネシアに恒久的施設(BUT)を有しないこと

が証明されていると認定しました。

さらに裁判所は、

  • 実質優先の原則(substance over form)

  • 特別法優先の原則(lex specialis)

を適用し、租税条約税率は引き続き適用されるべきであると判断しました。

控訴人は次の証拠を提出し、立証を行いました。

  • 2017年11月期PPh第26条月次申告書

  • PPh第26条の申告および源泉徴収証明

  • SKD(SMBC東京・大阪・シンガポール発行DGTフォーム)

  • SBLC契約および取引契約書

  • コミットメントフィーの仕訳および帳簿証憑

  • 日本およびシンガポール租税条約条文写し

  • 控訴人版未払税額再計算表

裁判所は、これらの証拠により本件取引が租税条約の適用対象であることが証明されたと判断しました。


まとめ(この判決のポイント)

租税裁判所は、PT Bank Sumitomo Mitsui Indonesiaの控訴を全面的に認容しました

2023年8月31日付 国税総局長決定 KEP-00579/KEB/PJ/WPJ.19/2023 に基づく更正は取り消され、税務当局が課した次の税額はすべて無効となりました。

  • 追加税額:Rp139,387,729

  • 行政制裁:Rp60,884,561

合計課税額:Rp200,272,290

その結果、最終的な未納税額は0ルピアと判断されました。

本件は、DGTフォームの記載不備などの形式的要件よりも、租税条約の実質的適用が優先される可能性があることを示した事例であり、インドネシアで事業を行う企業にとって重要な参考事例となります。

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