インドネシアでも「15%ミニマム課税」が始まっています
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― 税率22%でも安心できない、日系子会社の新しい登録・申告義務 ―
2025年1月1日以降に開始する事業年度から、インドネシアでもグローバル・ミニマム課税(いわゆる「15%ミニマムタックス」。Pajak Minimum Global)が適用されています。日本の親会社グループの連結売上が約1,300億円(7億5,000万ユーロ)を超えるグループに属するインドネシア子会社は、たとえ従業員数十名の小さな会社であっても、①「GloBE納税者」としての登録、②専用の年次申告書(DMTT申告書)の提出、③税負担が15%に足りない場合の追加納税、という3つの義務を負います。しかも、②の申告書は追加の税額がゼロでも提出が必要です。
「うちは法人税率22%で普通に納税しているから関係ない」――そう思われた方にこそ、本稿をお読みいただきたいと思います。タックス・ホリデーなどの優遇税制を使っている会社はもちろん、売上500億ルピア以下の中小規模の会社も、実は要注意だからです。
グローバル・ミニマム課税とは
グローバル・ミニマム課税は、「世界中のどこで稼いでも、利益に対して最低15%は税金を払う」という、約140か国が合意した新しい国際ルールです(OECDのいわゆる第2の柱/Pillar Two、GloBEルール)。低税率国に利益を移して税負担を下げる、という従来のプランニングを世界共通で封じることが狙いです。
インドネシアでは、財務大臣規則PMK 136/2024がこのルールを国内法化し、2025年1月1日以降に開始する事業年度から適用が始まりました。さらに2026年に入り、登録・申告書様式・納付といった実務手続を定める国税総局長規則PER-6/PJ/2026が公布され、実務の全体像が固まっています。
対象になるのは、どんな会社か
判定基準はひとつだけです。日本の親会社グループ全体の連結売上が、直前4事業年度のうち2年度において7億5,000万ユーロ(約1,300億円)以上かどうか。これだけです。
ポイントは、インドネシア子会社単体の規模は一切関係ない、ということです。現地法人が小さくても、親会社グループが基準を超えていれば対象になります。逆に、グループが基準未満であれば、登録も申告も一切不要です。義務が生じるのは「基準を超えたグループの構成企業のみ」であり、すべての会社に一律に課されるものではありません。
なお、対象グループに該当する場合は、インドネシア国内のグループ会社が各社それぞれ登録・申告を行います。また、申請をしなくても税務当局(DJP)が職権でステータスを付与できる建付けになっているため、「申請しなければ義務は生じない」わけではない点にもご注意ください。
なにをしなければならないのか ― 期限は「納付が申告より先」
対象となった場合の義務は、次の3つです。12月決算・2025年が対象初年度の会社を例に、期限とあわせてご紹介します。
1. 登録:「GloBE納税者」としてのステータス登録。対象初年度の年度末から9か月以内(例:2026年9月末まで)に、納税者ポータルを通じて申請します。
2. 納付:税負担が15%に足りない場合の追加税(トップアップ税)を、2026年12月末までにルピアで納付します。
3. 申告:専用の年次申告書(DMTT申告書等)とグループ報告関係書類を、2027年4月末までに電子提出します。
お気づきでしょうか。日本の税務と順番が逆で、納付期限(2026年12月末)が申告期限(2027年4月末)より先に来ます。「申告書を作りながら税額を固める」という進め方では間に合わないため、2026年の早い段階で税額の試算を終えておく必要があります。なお、親会社が3月決算の場合は、対象年度が2025年4月〜2026年3月となり、各期限も後ろにずれます。
「税率22%だから関係ない」とは限らない ― 4つの落とし穴
インドネシアの法人税率は22%ですから、一見すると15%は余裕でクリアしているように思えます。しかし、この制度で使うのは法定税率ではなく「実際の税負担率(実効税率)」です。次のような会社は、実効税率が15%を下回っている可能性があります。
1. タックス・ホリデー(法人税免除)を受けている会社:税負担率が0%となり、免除された分がそのまま追加の税金として戻ってきます。せっかくの免税メリットが実質的に打ち消されるため、投資計画の見直しにも関わります。
2. ファイナル・タックス(売上への課税)で納税が完結している会社:建設業・不動産業などです。利益ベースで計算し直すと、税負担率が15%を大きく下回ることがあります。
3. 会計と税務のズレ(減算調整)が大きい会社:税額だけが減る一方、判定に使う利益は会計ベースのままのため、税負担率が下がります。
4. 売上500億ルピア以下の中小規模の会社:法人税法第31E条により、売上48億ルピア相当部分の課税所得には11%(22%の半額)の軽減税率が自動的に適用されています。この優遇が実効税率を押し下げるため、「大きなグループの小さな現地法人」――まさに本制度の典型的な対象者――が該当しやすいのです。
特に4つ目は見落とされがちです。第31E条は申請不要で自動適用されるため、「優遇を受けている」という認識がないまま実効税率が下がっているケースが少なくありません。
当面は「簡易テスト」で追加税ゼロにできる会社が多い
朗報もあります。移行期間の救済措置(セーフハーバー)として、国別報告書(CbCR)の数値を使った3つの簡易テストのいずれか1つに合格すれば、その年の追加税はゼロになります。①インドネシアでの収入・利益が小さい(デミニミス)、②利益が給与・設備投資に応じた控除額以下、③簡易計算の税負担率が16%以上(2025年。2026・2027年は17%)、のいずれかです。普通に22%で納税している会社の多くは③で合格できる見込みです。
ただし、2つ注意があります。第一に、この救済は2026年12月31日以前に開始する事業年度までの期間限定です。第二に、判定にはCbCRの数値をそのまま使うため、数値の精度がこれまで以上に問われます。タックス・ホリデーやファイナル・タックス、第31E条の軽減がある会社は、③のテストで不合格となる可能性があり、事前の試算が欠かせません。
赤字の会社も「何もしなくてよい」わけではありません
ご相談時によくいただく質問が、「うちは赤字なのに、15%を追加で払うのか」というものです。答えは「いいえ」です。追加の税金は利益に対して計算するため、赤字の年度には原則として発生しません。
ただし、2つ補足があります。第一に、追加税がゼロでも、登録とDMTT申告書の提出義務は残ります。「税額ゼロ=手続不要」ではありません。第二に、注意が必要なのは「会計上は黒字だが、繰越欠損金の利用などで税務上の納税が少ない」会社です。この場合、判定に使う利益(会計ベース)はプラスのまま税額だけが小さいため、むしろ追加税が生じやすくなります。
まず、なにをすべきか
対応の第一歩はシンプルです。
1. 日本本社の経理・税務部門に、「当社グループはグローバル・ミニマム課税(Pillar Two)の対象か」を確認する。日本では一足早く2024年4月以後開始事業年度から親会社側の制度(IIR)が始まっているため、多くの本社では判定・計算が既に行われています。
2. 自社の状況を棚卸しする。タックス・ホリデー等の優遇税制の利用有無、ファイナル・タックスの適用、第31E条の軽減の有無、直近の実効税率を整理します。
3. 追加税の発生見込みとセーフハーバー合格可能性を試算し、登録・納付・申告の期限から逆算した対応スケジュールを立てる。
弊社では、上記の対象判定・影響診断までを無料でお手伝いしています。本社側で作成済みのPillar Two計算資料を活かしながら、インドネシア側の登録・申告実務に落とし込むところまで、日本語・インドネシア語・英語で一気通貫にサポートいたしますので、お気軽にご相談ください。
本ニュースレターは一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務助言を構成するものではありません。実際の対応にあたっては、貴社の状況に即した個別のご検討が必要です。
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