国内関連会社への管理サービス料は否認できるか―税務裁判所が税務調整を全額取消し
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今回は、PT Tambang Raya Usaha Tama(控訴人)と税務総局(被控訴人)の間で争われた、2020年度の移転価格税制に関する税務裁判所判決をご紹介します。
本件では、管理サービス料(Management Service Fee)98億6,218万8,844ルピアに対する税務調整が争点となりました。
税務当局は、管理サービスの実態が十分に証明されておらず、また控訴人社内にも同様の機能を担う部門が存在するため、サービスが重複していると主張しました。
これに対し控訴人は、当該取引は国内関連会社であるPT Indo Tambang Raya Megah Tbk(PT ITM)との取引であり、両社の法人税率はいずれも22%であるため、税率差を利用した租税回避は存在しないこと、さらに実際に管理サービスが提供されたことを示す十分な証拠を提出していると主張しました。
税務裁判所は、税率差を利用した租税回避の事実は認められず、管理サービスの提供実態についても十分な証拠が提出されていると判断し、税務調整を全額取り消しました。
なお、インドネシアは判例拘束性を採用する法体系(コモンロー)ではありませんが、本件はインドネシアで多くの企業が直面する移転価格税制上の論点を扱っており、実務上参考となる重要な判例といえます。
以下、その内容をご紹介します。
税務調査官(被控訴人)の主張
税務調査官は、2020年度の管理サービス料(Management Service Fee)9,386,218,844ルピアについて、プラスの税務調整を維持しました。
その理由は、次のとおりです。
納税者が提出した資料は、請求書(Invoice)、電子メール、業務手順書(SOP)、会議議事録などに限られており、現地訪問記録、現地調査報告、セミナー開催記録など、サービス提供の実態を直接示す証拠が提出されていませんでした。
控訴人の組織図を確認すると、人事(Human Resources)、財務・経理(Finance and Accounting)、総務(General Service)、HSEC、安全衛生、教育研修部門(Training Center)などが既に社内に設置されており、管理サービスの内容と重複していることから、サービスが二重に提供されている可能性があると判断しました。
管理サービスを認めるためには、
誰がサービスを提供したのか
どのような業務を行ったのか
いつ実施したのか
提供者に十分な能力があったのか
支払金額が提供内容に見合っているか
を具体的に立証する必要があると主張しました。
OECD移転価格ガイドライン2010年版第7.6項では、サービスの独立企業間価格を検証する際には、そのサービスが受益者の経済的価値を高めているかを検討すべきであるとされています。また、独立企業であれば同様のサービスに対して対価を支払うか、あるいは自社で実施するかを比較すべきとされています。
以上から、税務当局は管理サービスの実在性を十分に確認できず、納税者が提出した証拠だけではサービス提供の事実を認めることはできないと判断しました。
控訴人(納税者)の主張
控訴人は、管理サービス料9,386,218,844ルピアに対するプラスの税務調整には同意できないとし、次のように主張しました。
1.税務調整には法的根拠がない
税務当局が否認した管理サービス料は、控訴人の関連会社である**PT Indo Tambang Raya Megah Tbk(以下「PT ITM」)**から提供された管理サービスに対する対価です。
税務当局は、所得税法第18条第3項を根拠として税務調整を行いました。
同条は、「特殊関係を利用した租税回避を防止するための規定」であり、特殊関係により、本来より少ない所得を計上したり、本来より多額の費用を計上したりすることを防止する目的で設けられています。
さらに、PER-32/PJ/2011第2条第2項では、国内関連者との取引について移転価格税制が適用されるのは、主として税率差を利用した租税回避がある場合であると規定されています。
具体的には、次のようなケースです。
特定業種における最終課税・非最終課税制度の違い
奢侈品販売税(PPnBM)の取扱いの違い
石油・ガス共同事業契約(PSC)事業者との取引 など
また、SE-50/PJ/2013(移転価格税務調査マニュアル)では、国内関連者取引については、税務調査官は相手方を所管する税務署へ確認を行い、
取引金額が一致しているか
税率差などを利用した租税回避が存在するか
を確認しなければならないと定められています。しかし、本件では税務当局はその確認を行っていません。
さらに、
控訴人の法人税率:22%
PT ITMの法人税率:22%
と、両社とも同一税率です。
また、控訴人が費用計上した管理サービス料は、そのままPT ITM側では収益として計上されています。したがって、本件には税率差を利用した租税回避は存在せず、税務調整には法的根拠がありません。
2.管理サービスの提供実態は十分に証明されている
控訴人は、税務調査および異議申立ての段階で、管理サービスが実際に提供されていたことを示す証拠を包括的に提出したと主張しました。
提出した主な資料は次のとおりです。
(1)Management Service Agreement(MSA)
2017年から締結されている管理サービス契約書を提出しました。
(2)請求書および税務インボイス
PT ITMが管理サービス提供者として毎月発行していた請求書(Invoice)および税務インボイス(Faktur Pajak)を提出しました。
(3)管理サービス提供の実態を示す資料
控訴人は、
実際にサービスを提供した担当者
実施した業務内容
サービス提供者の職務・能力
管理サービスの内容
などを示す資料を提出し、管理サービスが実際に提供されていたことを説明しました。
控訴人によれば、PT ITMはグループ全体に対し、管理職レベル以上の経験豊富な人材を配置し、各社の業務運営を支援していました。
このような体制を採ることで、グループ各社がそれぞれ同じ管理部門を設置する必要がなくなり、人件費や管理コストを削減できるため、グループ全体として効率的な経営が可能となります。
一方で、税務当局は、「PT ITMが提供した管理サービスが不要であったこと」については何ら立証していません。したがって、管理サービス料を否認する根拠はないと主張しました。
税務裁判所の判断
税務裁判所は、控訴人とPT ITMの法人税率はいずれも22%であり、控訴人が管理サービス料として計上した金額は、そのままPT ITM側では管理サービス収入として計上されていることを認定しました。
また、税務調査および異議申立ての段階において、控訴人は管理サービス契約書(Management Service Agreement)、請求書、税務インボイス、実際にサービスを提供した担当者や業務内容を示す資料など、管理サービスが実際に提供されていたことを示す証拠を十分に提出していたと認定しました。
さらに、PT ITMはグループ会社全体に対し、管理職クラス以上の専門的な人材を配置し、各社の事業運営を支援していたことから、控訴人が当該サービスによる経済的利益を受けていたことも認められました。
裁判所は、SE-50/PJ/2013およびPER-43/PJ/2010、PER-32/PJ/2011の規定を踏まえ、国内関連者間取引について移転価格税制を適用するためには、税率差を利用した租税回避が存在することを税務当局が立証しなければならないと判断しました。
しかし、本件では、控訴人とPT ITMの法人税率は同一であり、税率差を利用した租税回避は認められませんでした。また、税務当局は管理サービスが実在しないことについても十分な証拠を示すことができませんでした。
以上から、裁判所は、管理サービス料9,386,218,844ルピアに対するプラスの税務調整は維持できないと判断し、全額を取り消しました。
税務裁判所の結論
項目 | 争点額(Rp) | 維持額(Rp) | 取消額(Rp) |
管理サービス料に対するプラスの税務調整 | 9,386,218,844 | 0 | 9,386,218,844 |
判決のまとめ
本件では、税務当局は管理サービスの実在性や社内機能との重複を理由として、管理サービス料9,386,218,844ルピアを損金不算入としました。しかし、控訴人は管理サービス契約書、請求書、税務インボイス、サービス提供の内容や担当者を示す資料などを提出し、サービスが実際に提供されていたことを立証しました。
また、本件は国内関連会社間の取引であり、控訴人とPT Indo Tambang Raya Megah Tbkの法人税率はいずれも22%であったため、税率差を利用した租税回避は存在しませんでした。税務当局も、そのような租税回避があったことを立証できませんでした。
これらを踏まえ、税務裁判所は管理サービス料は事業上必要な支出であり、税務当局によるプラスの税務調整は維持できないとして、9,386,218,844ルピアの税務調整を全額取り消す判決を下しました。




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