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移転価格税制判例|品質・取引リスクを考慮しないセグメンテーションは認められず、更正3.57億ルピアを全額取消

  • 7月13日
  • 読了時間: 8分

今回は、PT Tempu Rejo(旧社名:PT Pandu Sata Utama)を控訴人、インドネシア税務総局(Direktorat Jenderal Pajak)を被控訴人とする、2019年度の移転価格税制(Transfer Pricing)に係る総収入(売上高)3,568,848,159ルピアの更正をめぐる税務争訟を紹介します。

税務裁判所は、税務当局が実施したセグメンテーションは信頼性を欠くとして、売上高3,568,848,159ルピアの移転価格更正を全額取り消しました。本件では、税務当局が関連者取引と独立第三者取引を区分(セグメンテーション)し、ROTC(Return on Total Cost:総原価利益率)に基づいて移転価格を検証したものの、葉たばこの「グレード(品質)」や取引リスクの違いを十分に考慮していなかったことが争点となりました。


本件は、PT Tempu Rejo(旧社名:PT Pandu Sata Utama)を控訴人、インドネシア税務総局(Direktorat Jenderal Pajak)を被控訴人とする、2019年度の移転価格税制(Transfer Pricing)に係る総収入(売上高)3,568,848,159ルピアの更正をめぐる税務争訟です。税務調査官は、損益計算書を関連者取引と独立第三者取引に区分した上で、ROTCを比較対象企業と比較し、関連者取引の利益率が第1四分位(Q1)を下回るとして、中央値(Q2)まで利益率を引き上げる更正を行いました。これに対し控訴人は、事業実態からセグメンテーション自体が適切ではなく、品質や取引リスクの違いも考慮されていないため、OECD移転価格ガイドラインやインドネシアの移転価格規定にも適合しないと主張しました。税務裁判所はこれらの主張を認め、更正をすべて取り消しました。


当事者

控訴人

PT Tempu Rejo(旧社名:PT Pandu Sata Utama)


被控訴人

インドネシア税務総局


争点および税務当局の主張

項目

控訴人

被控訴人

更正額

総収入(売上高)

167,854,667,358

171,423,515,517

3,568,848,159

PER-22/PJ/2013では、

納税者に関連者取引と第三者取引の双方が存在する場合、独立企業間原則(PKKU)の検証における比較可能性を高めるため、財務諸表を関連者取引と第三者取引に区分(セグメンテーション)することとされている。

税務調査官は、売上原価(HPP)および販売費については直接配賦、一般管理費については間接配賦を用いて、関連者取引と独立取引の損益を区分した。


セグメント別損益

項目

関連者

独立第三者

合計

売上高

59,797,105,378

108,057,561,980

167,854,667,358

売上原価

54,666,994,952

89,055,186,977

143,722,181,929

売上総利益

5,130,110,426

19,002,375,003

24,132,485,429

販売費

1,587,034,297

0

1,587,034,297

一般管理費

5,699,386,411

10,299,190,846

15,998,577,257

営業費用合計

61,953,415,660

99,354,377,823

161,307,793,483

純利益

▲2,156,310,282

8,703,184,157

6,546,873,875

ROTC

▲3.48%

8.76%

4.06%

比較対象企業

企業名

2017

2016

2015

3年間加重平均

Kamna Industries Private Limited

インド

-

1.27%

1.65%

1.55%

Pragathi Tobacco Traders (India) Private Limited

インド

2.12%

2.17%

2.65%

2.28%

Sri Saj Balaji Tobaccos Private Limited

インド

-

3.86%

4.06%

3.95%

Thapawong Co., Ltd

タイ

6.16%

6.26%

6.00%

6.14%

Vinataba Trading & Investment JSC

ベトナム

0.81%

2.41%

3.45%

2.21%

四分位レンジ

Q1(第1四分位):2.21%

Q2(中央値):2.28%

Q3(第3四分位):3.95%

控訴人の関連者取引セグメントのROTCは▲3.48%であり、Q1(2.21%)を下回っている。そのため、税務調査官は利益率を中央値(Q2)2.28%まで引き上げた。


更正計算ROTC(2019年)

▲3.48%

中央値(Q2)

2.28%

利益率差

5.76%

ROTC = Operating Margin ÷ Total Cost

ROTC = (Sales-Total Cost)÷ Total Cost

Sales = (ROTC × Total Cost)+Total Cost


計算式

Sales

=(2.28% ×(54,666,994,952+7,286,420,708))+

(54,666,994,952+7,286,420,708)=63,365,953,537ルピア


比較結果

PKKU分析上の売上高63,365,953,537ルピア

申告売上高59,797,105,378ルピア

更正額3,568,848,159ルピア


控訴人(納税者)の主張

  1. 本件はそもそもセグメンテーションできる事業ではない。原材料購入から製造工程で、HM Sampoerna向けとULT向けで全く同じ工程を経ている。契約時点で、HM SampoernaおよびULTが品質・数量の仕様を決定しており、契約内容は後日提出済みである。原材料は農家との契約栽培により購入しており、品質の良し悪しに関係なく全量買い取る仕組みとなっている。これは農家保護を目的とする制度でもある。HM Sampoerna向けとULT向けでタバコのグレードが異なることについては、別途書面により説明しており、セグメンテーションを行わなかった理由も詳細に説明している。


  2. 関連者取引と独立第三者取引は、同一の事業特性(Business Characterization)から生じている。そのため、両者を別々に分析することは適切ではない。製造工程は全く同じであり、コストも区分できないため、関連者向け販売と第三者向け販売を分離することは不可能である。税務当局が行ったセグメンテーションは、会計基準にも適合していない。


  1. 控訴人は、2023年1月24日付の書面(番号なし)により、本件販売取引の仕組みおよび本件争訟について、次のとおり説明した。原材料購入および売上原価(COGS)の配賦について控訴人は、等級(グレード)が低いものから高いものまで様々な品質の葉たばこを、梱包単位(ベール)で購入している。そのため、関連者向け販売と独立第三者向け販売について、売上原価(COGS)を直接区分して配分することは不可能である。製造原価は、当期の総製造費用を総生産量で按分して算定している。したがって、税務当局が生産データを基礎として行ったセグメンテーションは、独立企業間原則(PKKU)の比較可能性を高めるどころか、かえって分析結果に偏り(バイアス)を生じさせている。


製品グレード(品質)の違い

関連者への販売数量は独立第三者への販売よりはるかに多い。

しかし、関連者へ販売する葉たばこの品質(グレード)は、一般的に独立第三者へ販売する製品よりも低い。

そのため、税務当局が販売数量のみを基準としてコストを配分した方法は合理性を欠いている。

数量が多い関連者向け販売には必然的に多くのコストが配分される一方、独立第三者向け販売は数量が少ないためコスト負担が小さくなる。

したがって、販売価格の違いは純粋に製品品質(グレード)の違いによるものであり、価格操作(利益移転)によるものではない。


PMK 213/2016 第9条第3項

「納税者が異なる事業特性を有する複数の事業を営んでいる場合には、ローカルファイルは、それぞれの事業特性ごとに区分(セグメント化)して作成しなければならない。」


OECD移転価格ガイドライン2017

第1章 B.3.3 パラグラフ2.84では、次のように規定されている。

「検討対象となる関連者間取引(Controlled Transaction)と関係のない費用および収益は、それらが独立企業間取引との比較可能性に重大な影響を及ぼす場合には除外されるべきである。また、関連者間取引(あるいは第3.9~3.12項に従って適切に集約された取引)から得られる純利益を算定または検証する際には、納税者の財務データについて適切なレベルでセグメンテーションを行う必要がある。したがって、企業が複数の性質の異なる関連者間取引を行っており、それらを独立企業の取引と企業全体ベースで適切に比較できない場合には、企業全体を対象としてTNMMを適用することは適切ではない。


このガイドラインは、

関連者取引と独立第三者取引を区分する場合であっても、財務データを適切なレベルでセグメンテーションしなければ、信頼できる分析結果は得られないことを示している。


裁判所の判断

裁判所は、税務当局が作成した売上原価(HPP)のセグメンテーション計算について、以下の事実を認定した。

  1. 税務当局は、葉たばこの種類(DFC、GSC、JATIM、KASTURI)ごとに製造を分類し、さらに、月別・種類別・関連者/非関連者別の販売数量(kg)データを基礎として、月別・種類別・関連者/非関連者別の売上原価データを作成していた。


  2. Sales Recapitulation(販売集計表)によれば、同一種類の葉たばこであっても、グレード(品質)およびタイプによって販売価格は異なる。また、審理において、このグレードの違いが販売価格に大きな影響を与えていることが確認された。したがって、信頼できるセグメンテーションを行うためには、葉たばこの種類だけでなく、グレード(品質)も考慮しなければならない。


  3. しかし、税務当局は、葉たばこの種類だけを考慮し、品質(グレード)の違いを全く考慮していなかった。そのため、税務当局によるセグメンテーションは、正確性を欠き、十分な検討がなされていない。


  4. さらに、2019年度監査済財務諸表(Purwantoro, Sungkoro & Surja監査法人、36ページ)によれば、控訴人は、Universal Leaf Tobacco Company Inc.(ULT)から、ULT向け葉たばこ購入資金として前受金を受領していた。この前受金には利息が付されず、ULTへの葉たばこ販売代金と相殺する形で決済されていた。一方、独立第三者への販売では、前受金は存在せず、監査済財務諸表32ページによれば、多額の売掛金(Accounts Receivable)が計上されていた。これは、関連者取引では代金回収リスクが極めて低い一方、独立第三者取引では回収リスクが高いことを意味する。このようなリスクの違いは、販売価格に差異が生じる合理的理由となる。しかし、税務当局は、この重要なリスク要因を考慮することなく独立企業間価格を検証していた。そのため、税務当局の分析は、十分な注意を欠き、信頼性がないと裁判所は判断した。


判決

提出された証拠、当事者双方の説明、ならびに関係法令を総合的に検討した結果、税務裁判所は、税務当局の主張は十分な証拠および合理的説明によって裏付けられていないと判断した。そのため、控訴人の控訴請求を全面的に認容した。

項目

争点金額

維持額

取消額

売上高

3,568,848,159ルピア

0

3,568,848,159ルピア


まとめ

本件は、移転価格税制におけるセグメンテーションは、事業の実態や取引の特性に即して慎重かつ適切に行われなければならないことを示した重要な判例である。

裁判所は、税務当局が葉たばこの「種類」のみを基準としてセグメンテーションを行い、販売価格や単位当たりコストに大きな影響を与える「グレード(品質)」の違いを考慮しなかった点を問題視した。

さらに、関連者取引では無利息の前受金により代金回収リスクが低い一方、独立第三者取引では多額の売掛金が発生しており、両者の取引リスクには明確な差異が存在していたにもかかわらず、税務当局はこのリスク要因を分析に反映していなかった。

これらの事情を踏まえ、裁判所は、税務当局によるセグメンテーションおよび独立企業間価格の検証は正確性・慎重性・信頼性を欠くものであると判断し、売上高3,568,848,159ルピアに対する更正をすべて取り消し、控訴人の請求を全面的に認容した。


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