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移転価格税制判例|技術サービス料は実際の受益者が負担すべきと判断 税務調整2.32億米ドルを全額取消

  • 7月13日
  • 読了時間: 8分

今回は、PT Yin Hwa Indonesiaをめぐる2021年度の移転価格税制に関する税務裁判所判決をご紹介します。


本件の主な争点は、次の2点です。

  1. Framas GEKへ支払った技術サービス料(Technical Service Fee)が、控訴人の事業活動と直接関係する費用ではなく、本来はPT Framas Indonesiaが負担すべき費用であるか。

  2. 2021年度には控訴人からFramas Indonesiaへの販売がなくなったにもかかわらず、Technical Service Feeが増加していることから、費用負担の付け替え(Cost Shifting)が行われたと認められるか。


税務裁判所は、2021年度に販売スキームが変更され、それまでFramas Indonesia経由で行われていた販売が、Adidas Germanyから控訴人への直接発注へ変更された事実を認定しました。

その結果、実際に技術サービスを受けたのは控訴人であり、Framas GEKに対して技術サービス料を支払う義務があると判断しました。

さらに、Framas GEKと控訴人との契約書、および実際に技術サービスが提供されたことを示す証拠も提出されていました。

そのため、Technical Service Fee 232,096米ドルに対する税務調整は維持できないとして、裁判所は全額取り消しました。


争点

PT Yin Hwa Indonesia

2021年度 プラスの税務調整

項目

税務当局(USD)

納税者(USD)

差額

プラスの税務調整

313,236

81,140

232,096


税務調査官(被控訴人)の主張

税務調査官は、2021年度のTechnical Service Fee(Sales Technical Service Fee – Miscellaneous)232,096米ドルについて、プラスの税務調整を維持した。

その理由は、Technical Service Feeの支払額が売上高の約30%にも達していることから、

納税者の説明には同意できないというものであった。


さらに、前年(2020年度)の販売状況を分析した結果、2020年度には控訴人からFramas Indonesiaへの販売が存在したが、2021年度にはFramas Indonesiaへの販売はなくなった一方で、Framas Kunststofftechnik GmbH(Framas GEK)へ支払うTechnical Service Feeだけが大幅に増加していた。


税務調査官はこのことから、

Technical Service Feeの費用負担が控訴人へ付け替えられた疑いがあると判断した。

そのため、2020年度におけるFramas Indonesiaへの販売額に対するTechnical Service Fee比率(66%)のみを損金算入可能額として認め、それを超える部分について税務調整を行った。また、PT Framas Indonesiaの納税者登録証(SKT)によれば、事業内容に変更はなく、事業スキームも前年と同じであるはずであるとして、更正を維持した。


異議申立てを棄却した理由

税務当局は、次の点を理由として異議を棄却した。

  1. 「Technical Service Agreement in Respect of Shoe Last Projects」により、

控訴人とFramas GEKとの間で契約が締結され、

Framas GEKはAdidas向けShoe Last(靴型)のモデリングを実施し、

その後控訴人がShoe Lastを製造することとなっている。


  1. Adidas向けShoe Lastは、

Framas GEKから提供されるモデルに基づいて製造され、その対価としてTechnical Service Feeが支払われている。


  1. 契約書には、Shoe Last製造に係る価格表が記載されている。


  2. Technical Service Feeは、靴工場からの注文数量に応じて支払われる。


  3. 税務当局は、靴の注文一覧およびTechnical Service Feeを照合したところ、注文数量と請求書金額は一致していた。

  4. 靴工場からの注文について、契約書、発注書(PO)、納品書(DO)、請求書(Invoice)などの裏付資料は提出されなかった。

そのため、Technical Service Feeが実際の注文数量に見合うものであるかについて、

さらに検証することはできなかった。


税務調査時において、税務当局は、Technical Service Fee 232,096米ドルについてプラスの税務調整を実施した。税務当局は、Technical Service Feeは控訴人の事業とは直接関係がなく、本来PT Framas Indonesiaが負担すべき費用であると判断した。


控訴人(納税者)の主張

控訴人は、232,096米ドルのプラス税務調整に同意せず、次の理由を主張した。

Technical Service Feeは、Framas GEKから提供されたShoe Last製造に関する技術サービスの対価として支払った費用である。

税務当局は、Shoe Lastの製造事業はPT Framas Indonesiaの事業であるため、

Technical Service FeeもPT Framas Indonesiaが負担すべきであると主張している。

しかし、この見解は誤っている。


控訴人の事業内容

控訴人の事業内容は、

① プラスチック製Shoe Last(靴型)の製造

② 当該製品の輸出販売

である。


設立定款によれば、控訴人は、輸入したHDPE9003を原材料としてShoe Last(靴型)を製造する会社である。したがって、Framas GEKから技術サービスを受ける主体は、PT Framas Indonesiaではなく、控訴人自身である。この事実を裏付ける証拠として、

・Framas GEKとの契約書

・オンライン会議によりShoe Last製造技術の説明を受けたスクリーンショット

も提出している。


2020年度の販売スキーム

  1. Adidas Germany

Framas Indonesiaへ注文


  1. Framas GEK

Framas Indonesiaへ技術サービス提供


  1. Framas IndonesiaはShoe Lastを製造しないため、控訴人へ製造を発注


  2. 控訴人がShoe Lastを製造し、Framas Indonesiaへ納品


  3. Framas Indonesiaが靴工場へ販売


2021年度の販売スキーム

2021年度には、Shoe Last(靴型)の販売スキームが以下のように変更された。

  1. Adidas Germanyが、控訴人へ直接Shoe Lastを発注する。

  2. Adidas Germanyからの受注条件の一つとして、Framas GEKが控訴人に対しTechnical Service(技術サービス)を提供することが定められている。

  3. 控訴人が製造したShoe Lastを靴工場へ直接販売する。


したがって税務当局が、Technical Service Fee 232,096米ドルは本来PT Framas Indonesiaが負担すべき費用であり、控訴人の事業とは関係がないと主張することは、

実際の取引実態と矛盾している。

実際にFramas GEKから技術サービスを受けたのは控訴人であり、PT Framas Indonesiaではない。


所得税法第6条第1項

インドネシア所得税法第6条第1項では、「国内納税者および恒久的施設(PE)の課税所得は、総所得から所得を得るため、徴収するため、および維持するために要した費用を控除して算定するものとし、その中には事業活動と直接または間接に関連する費用が含まれる。」

と規定されている。


同条の解説

ここでいう費用とは、通常の事業活動において日常的に発生する費用をいう。

損金算入するためにはその支出が、事業活動、または課税所得を得る・徴収する・維持する活動と、直接または間接に関連していなければならない。


したがって、事業活動と関係するTechnical Service Feeは、

当然に損金算入が認められるべきである。


国税通則法(KUP法)第12条

第12条第2項

「納税者が提出した申告書(SPT)に基づく納税額は、税法に従って正しいものとみなされる。」

さらに、インドネシアはセルフアセスメント制度を採用している。したがって納税者は、

  1. 納税額を自ら計算

  2. 自ら納税

  3. 申告書(SPT)を提出する。


第12条第3項

「税務総局長が、申告書に記載された納税額が正しくないことを示す証拠を取得した場合には、本来納付すべき税額を決定することができる。」つまり、申告内容が誤っていることを立証する責任は、税務当局側にある。

ここでいう「証拠を取得する(mendapatkan bukti)」とは、

税務調査等を通じて、税務当局自身が積極的に証拠を収集しなければならないことを意味する。したがって、本件では、税務調査官が申告内容が誤っていることを、十分かつ適格な証拠によって立証しなければならない。

これは、PMK-17/2013(PMK184/2015改正)第8条(c)において、「税務調査結果は、十分かつ適格な証拠に基づかなければならない」と規定されていることとも一致する。


立証責任について

Borje Leidhammar著

The Burden of Proof in Tax Law

では、次のように述べられている。

"The theory is that the burden of proof should rest on the party that makes a claim which affects another party."

(立証責任は、相手方に影響を及ぼす主張を行う当事者が負うべきである。)

この考え方は、KUP法第12条第3項とも一致している。


本件では、納税者の申告内容が誤っていると主張しているのは税務当局である。

したがって、その立証責任は税務当局が負う。控訴人は、SPTおよび添付資料によって、

自らの申告内容が正しいことを証明している。また、SPTには次の宣誓文も記載されている。

「私は、本申告書および添付書類の内容が真実・完全かつ明確であることを確認し、その内容に虚偽があった場合には、関係法令に基づく一切の法的責任および制裁を受けることを了承します。」


税務当局の疑義は根拠がない

税務当局は、靴工場からの注文について、契約書、PO、DO、Invoice等が提出されていないことを理由に、Technical Service Feeを認めなかった。しかし、控訴人は、2021年度について、KPP Madya Dua Tangerangによる税務調査を既に受けている。


その結果、2022年12月15日付税務調査結果通知(SPHP)No. S-08199/RIKSIS/KPP.0813/2022では、Technical Service Feeに関連する売上について、一切更正は行われていない。


さらに、2023年1月9日付で、法人所得税還付決定通知書(SKPLB)No.00005/406/21/456/23が発行されている。

また、同日付で、2021年12月期VAT還付決定通知書(SKPLB PPN)No.00002/407/21/456/23も発行されている。


このVAT還付決定でも、VAT課税標準額(DPP PPN)については一切更正されていない。

つまり、税務当局自身が、控訴人によるShoe Last販売額が正しいことを認めている。

さらに、echnical Service Feeに係る仕入VATについても、税務当局は一切更正していない。

このことは、税務当局の判断に一貫性がないことを示している。


控訴人は、これらを裏付ける証拠として、

・SPHP No. S-08199/RIKSIS/KPP.0813/2022

・最終協議議事録(Risalah Pembahasan Akhir)

・VAT還付決定通知書(SKPLB PPN)

を提出した。

したがって、税務当局が、Shoe Last販売の実在性について疑義を示したことは、

何ら根拠がなく、本件Technical Service Feeの税務調整とも無関係である。


そのため、控訴人は、裁判所に対し、当該税務調整の取消しを求めた。


税務裁判所の結論

税務裁判所は、控訴人の請求を全面的に認容した。その結果、2021年度Technical Service Fee – Miscellaneous232,096米ドルに対する税務調整は、全額取り消された。

項目

争点額(USD)

維持額(USD)

取消額(USD)

純所得:プラス税務調整

232,096.00

0

232,096.00

差額

1.00

0

1.00

純所得合計

232,097.00

0

232,097.00


判決のまとめ

本件では、2021年度に販売スキームが変更され、従来はPT Framas Indonesiaを経由していたShoe Lastの受注が、Adidas Germanyから控訴人への直接発注へ移行したことが重要な争点となった。

裁判所は、この変更により、Framas GEKから技術サービスを実際に受け、その利益を享受したのは控訴人であると認定した。また、Framas GEKとのTechnical Service Agreementや、オンライン会議による技術提供の記録など、サービス提供の実態を示す証拠も十分に提出されていた。

一方で、税務当局は、Technical Service Feeは本来PT Framas Indonesiaが負担すべき費用であると主張したものの、その主張を裏付ける十分かつ適格な証拠を示すことができなかった。さらに、法人税やVATの税務調査では売上や仕入VATについて更正を行っておらず、Technical Service Feeのみを否認したことについても判断の一貫性を欠いていると評価された。

以上を踏まえ、裁判所は、Technical Service Fee 232,096米ドルは控訴人の事業活動に直接関連する損金であり、税務当局によるプラスの税務調整は維持できないとして、全額取り消す判決を下した。


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